18/tone
世の中は思ったより色で溢れている。
今回は色のトーンの話。
撮るその時は、実は色って見えているようで見えていないように思う。
帰ってからパソコンの画面で見て思う。「被写体の後ろにある赤い看板目立つなー!」とか「ボケている後ろの緑色の葉っぱが思ったより濃くて、ピントを合わせた白い花が全然目立ってないなあ」とか。
なるべくファインダーを覗こうと思った瞬間、覗いてシャッターを切る瞬間には一
瞬であれ色のことを考えてはみるが。。
では現像する時。
私がまず考えることは、「その写真で伝えたいこと」
そして「それが伝わるためには何をするべきか」
そのことをより考え出したのは3月の有田出張の時のこと。
ARITA PORCELAIN LABの撮影でした。
ARITA PORCELAIN LAB
http://www.aritaware.com/index.html
アリタポーセリンラボ有田旗艦店
是非ホームページを見て欲しい。有田焼きがこんなに身近で素敵なものだったんだと驚くに違いないと思う。
私がアリタポーセリンラボで一番魅力に感じているのは、ホームページ内、コンセプトにあるこの考え。
弊社では、有田焼の伝統技法を現代のライフスタイルに合うようにREMIXし、有田焼を後世へと伝えていくことが我々の使命だと考えております。
「和」というのは様々な物事を取り入れ、掛け合わせ、新しいものを生み出すということ。この旗艦店もまたそんな場所だった。
私の写真の現像の流れは、Lightroomで現像(整える)→Photoshopで現像
Photoshopに入っているプラグインはNik Collectionだけ。
Nik Collection
https://www.google.com/intl/ja/nikcollection/
私が購入した時は有料だったのに、googleに買収されたら無料化しやがった。やってくれたな、、、
今回のテーマであるトーンの統一に対して、私はAnalog Efex Proを主に使った。
例えばこの写真。
これがLightroomで整えたもの。
これが現像後。
入口の木の色を強調したかったので、全体的に、特に写真下部のトーンを黄色に寄せた。元々の写真だと写真上部の青い壁やガラスの部分の黒が目立つため主題が分かりづら買った。
例えば木の黄色の彩度を上げたり、そうしてからビネットをかけるのも一つの手ではあると思うが、今回の有田の写真全てにおいて、ビビッドな色や強くコントラストを後からつけた表現は避けたかった。静の中の動を伝えたかった。
そして工房へ、、、
ここでの撮影、現像はすごく難しかった。
先程も書いたが、単純にビビッドな色にしたり、コントラストを強くしたり、明瞭度をあげれば、見た目が良くなったり伝わりやすくなるようなものではなかった。
撮る前にまず第一にしなければいけないことは「観察すること」。
今目の前にいる職人さんが、どんな機材で、どんなことをするのかを知ること。
その工程を経て初めて、「自分が伝えたいこと」を考えることができる。
このトーンの話も、「何を伝えたいかを明確にすること」が基本だ。
トーンの統一というのは、あんまりこういう言い方はしたくないけれど
「伝えたいことに対して写真の中で不必要なものを排除し、伝えたい情報を強調する」ということ。
Analog Efex Proを使いある程度トーンの方向性を決めた後、それの%を調節しつつ部分的に重ねている。
工程は「画像を/色を元々の写真の上に乗せている」
ではあるが、実際は「取捨」し、「残した部分を強調」しているのを忘れてはいけない。。
左がLightroom現像後、右がPhotoshop現像後
元々は暖色寄りだが色で言うと青色が写真の多くを占めている。
私がこの写真の中で強調したいのは、「顔」と「磁器(削っているため粉が舞っている)」。なので伝えたいものの色のトーンに統一することに。
全体を薄く、肌と磁器の色と同じ黄色に寄せた後、赤で囲った部分をより黄色いトーンにした。
ただそれだけでは中心部分に視線を誘導させづらい。
なので、赤で囲った部分を黄色いトーンにする際、そこのコントラストが低くなるように調整。
赤で囲った部分と青で囲った部分に輝度の差を与えた。
輝度の差っていうのはこういうイメージ。
なんで黒いビネットをかけなかったかというと、右上からの光の流れを消したくなかったから。
そして、赤で囲った部分を黒いビネットにしていたら、もっと硬く重い印象になっていたと思う。
これらの現像は、撮る段階で頭にあったからできたことだとなんだと思う。
初めて見た職人さんの動きはすごく丁寧で、洗礼されていて、そして早かった。
私は何も知らなかったから、難易度が高い撮影だった。
尚且つ、様々な制限があった。
撮影できる時間に限りがあり、
工房内は割れ物、精密機械等があるため、基本カメラ一台、レンズはもう一本手で持ち歩くようなスタイルでないと邪魔になり、
職人さんのすぐ近くで撮影することはできない、
外では雨が降っていて、工房内は薄暗い
この現像を実行するには、この露出を思い通りにしづらい状況下であっても、
「ハイライト部は白トビしすぎず、シャドウ部は黒つぶれしないくらいで、階調は豊か」
という条件を満たさないといけなかった。
手法というのは、必ず思想とセットになって初めて効力を発揮するものだと思う。
ともかくこの写真たちで、職人さんたちの真摯な眼差し、生み出す時の手元の美しさ、そして有田焼きの魅力が伝われば嬉しい。
この撮影で使用した機材は
Nikon D810
NIKKOR 70-200mm f/2.8
NIKKOR 14-24mm f/2.8
カールツァイス Milvus 2/35 ZF.2 [ニコン用]